豊川市の住宅街の中に建つイトコースタッフ小林さんの住まいは、築20年以上というイトコーの家。 室内は、飴色に美しく経年変化した木材が印象的。 イトコーで家を建てた住まい手さんを対象としたメンテナンス教室の講師も務める小林さんだけあって、隅々まで手入れが行き届いている清々しい空間です。 そんなご自宅のダイニングテーブルに座って、お話を伺いました。
この家は何年に建てられたのですか?
1998年です。当時、私はOMソーラー協会(現・OMソーラー株式会社)が建築家の秋山東一さんと開発した「フォルクス(VOLKS)」という住まいの設計や施工をより良くしたい!ということに夢中になってましたね。 ちなみにイトコーのフォルクスはナンバリングしていて、この家はNo.20です。
小林さんはフォルクスの担当者としてかなり熱心だったと聞いています。
フォルクスに出会った時は、画期的な住宅だと思いました。 構造や設計の方法にルールがあって、それがとてもシンプルで合理的なんです。 いちばん良かったことは、フォルクスは設計者が思い描いたものがそのままかたちになること。 それまでやっていた住宅は、良し悪しが大工さんの技量とか現場のその場の判断に左右される部分もかなり大きかった。 それが設計や施工のルールが定まることで、施工する人もそのルールに従ってやってくれるようになりました。 いい家をつくるための「決まりごと」ができたことで、できるものの質が格段に安定してきたと思いました。イトコーのフォルクスは2009年まで続き、No.188まで建てました。 この数は全国でも鹿児島のシンケンさんに次いで2番目なんですよ。 当時は、全国の工務店が集まって切磋琢磨しながら技術を磨きあってて本当に面白かったですね。 29歳に入社してすぐにフォルクスに出会って、35歳くらいまでの間は本当に寝る時間を惜しんで仕事に熱中してました。
フォルクス後のイトコーさんはどんな感じだったんですか?
その後、フォルクスはイトコーのオリジナルとして今も続く「穂の国の家」と「四季と暮らす家」に発展していき、より今の時代に合わせた住まいに進化しています。 あと面白いのが、ここ数年で「16年目の、GOOD-TIME PLACE。」なんかを見た若い世代から、「フォルクスかっこいいですね」という再評価の声が出てきたこともあって、2020年に完成したスタッフの白鳥夫妻の家は当時のフォルクスと同じ「針葉樹合板」を内壁に使っています。針葉樹合板を使った内壁は、フォルクスの全盛期に「木造打ちっ放し」というコピーで知られていましたが、今の若い人たちにも新鮮に映るようです。この白鳥家の家のシリーズは「VOLKS FUN」と名付けています。
「穂の国の家」、「四季と暮らす家」、「VOLKS FUN」と使用する柱・梁や内壁など材料で違いはありますが、どの家にもフォルクスの時に学んだ合理的な家づくりのルールが生きていると思います。
小林さんの現在のお仕事の内容はどんな感じなんですか?
フォルクスの時にMacを使って設計をするようになったのがきっかけで「ITを仕事に活かすこと」を意識するようになりました。 特に設計に活かすと、ものすごい威力を発揮するんです。 例えば、この「SketchUp」というソフトを使って、敷地の中にどんなプランの建物を配置するか、近隣にどんな建物があるか等を設定すると、1年間を通じて太陽の日射が窓からどう差し込むか、分単位で予測できます。 つまりこれまで設計者の経験とか勘に頼って「おそらくこうだろう」と設計していたものが、コンピュータで完全に結果をシミュレーションできてしまいます。 こんな凄いソフト、使わない手はないでしょう? 例えば一年でいちばん陽が短い冬至の日に、リビングの掃き出し窓からどんな風に陽射しが差し込むか、それがシミュレーションできます。 場合によっては予想以上に陽射しが差し込まないことがわかる場合もあるかもしれませんが、その場合はプランや配置計画を見直せばいい。 またそうやって年間を通した日照と家の断熱性能をシミュレーションすることで、光熱費の予測まで出来る機能もついています。 これはお客様からしても設計する側からしても、安心感が全く違いますよね。 このソフトを使ってお客様に設計計画をプレゼンすることで、「安心して任せていいんだな」と思っていただけることも多いです。 そんな感じで、今の仕事はこのソフトを利用して、配置計画が難しいお客様のプランのお手伝いをすることが多いですね。 また私がこのソフトをいろいろと利用していることがOMソーラーさんにも知られるようになって(笑)、他の工務店さん達に使い方をレクチャーすることもあります。 こうしたITの利用法を社内で共有していくことも、私の大切な仕事だと思っていて、今説明した「SketchUp」以外にも便利に使えるものを色々と紹介しています。 私1人だけがこうしたことに詳しくなるのと、社員の皆がこうしたITのことを分かっているのでは全体の成果が大きく変わってくると思いますからね。
「フォルクスが好き」「ITが好き」という気持ちを仕事に100%活かそうとする姿勢が素晴らしいですね。「好き」といえば、小林さんはギターが本当に好きで、腕前もかなりのものだという話を聞いています。
ギターは中学生の頃から始めて、すぐにのめりこみました。
高校は高専に行ったんですが、それも高専は寮に入ることになるのでギターを弾きまくれると思ったから。それくらい好きでしたね。 それで5年制の高専を卒業して20歳で地元の繊維会社に就職し、工場建設のための設計をする部署で働いてましたが、それと同時に、プロになる気満々で音楽活動もしていました。 でも今考えると、就職していちおうの安定も確保しての音楽活動で、ハングリーさが足りなかったところもあるかもしれません。 奥さんに「私の人生はどうなるの?」って言われた時に、「そうか」と思い、「ギターの道はあきらめて仕事を頑張ろう」と決意しました。 そうして一級建築士の免許を取り、ゼネコンで働いたり、友人の設計事務所の仕事を手伝ったりと建築に関わる様々な仕事を経験した後、29歳でイトコーに入ったんです。
イトコーに入社した後もギターは続けてらっしゃいますよね。
はい。僕がやっているジャンルは「フュージョン」ですね。 バンドでいうと「カシオペア」とか「T-SQUARE」とかが有名です。
仕事が少し落ち着いた34歳頃から月1回、仲間たちとのフュージョンのバンドでライブハウスにずっと出演していました。 このライブハウスは、出演者はプロも多く、レベルが高いところなので練習もきちんとして、やってきましたよ。 数年前からは年2回の出演に減らしていますが、相変わらず楽しんでいます。 後はイトコーのイベントの機会に出演させてもらうこともあります。 会社の皆さんには音楽活動を応援していただいて本当にありがたいです。