家の中の空気が心地いいと
なんだかお味噌もおいしくできるような気がします
愛知県豊川市郊外の住宅地。まだまだ多くの田んぼや畑が点在している。
S様と奥様が家を建てたのは2003年。
この家を建てようと真剣に考えるようになったのは、いよいよ定年を目前にした頃からだった。
それまで走り続けてきた生活のリズムを変え、ゆったりとした時の流れを愉しみたい。
土に触れ、四季の変化にからだ全体で受け止め、夫婦ふたりで、あるいは多くの友人たちと愉しみを共有できる生活。
そんなSさんご夫妻の思いを具体化させたのがこの家だ。
外構にも自然素材にこだわった。
犬走りには火山灰を原料にした白州土タタキを使うなどして、輻射熱を和らげ、住宅周りを快適にする様々な工夫がされている
普段は夫婦ふたりで過ごすけれども、時には大勢の人を呼びたい。
そこで間取りはシンプルなものとし、家全体はコンパクトながらも、ゆったりと広々とさせることにこだわった。
キッチン部分は昔の農家のような土間にした。毎日の畑仕事などにはその方が便利だし、漬物作りや保存にも便利だ。
キッチンは実用本位の業務用の機器を入れた。土間とリビングの境には式台を設けた。
畑仕事の途中でも、靴を履いたままひと息つけるし、訪れた人が腰掛けておしゃべりを愉しんでいくこともある。
どこか懐かしく、訪れた人が誰もホッとできる空間作り。それが、この家造りの最大のテーマだった。
キッチン部分は昔の農家のような土間にした。
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キッチンは汚れたらすぐに水が流せるように。
畑の土がついた野菜もそのまま持ち込める。
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キッチンには、本格的な業務用厨房器を入れた。たくさんの友人たちとの料理作りは愉しい。
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雑穀を混ぜたおにぎりや自家製の味噌、ケーキなどを持ち寄り愉しいひとときを過ごす。
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柿を熟成させて柿渋を作ったりして、手作りの味を楽しむ。
壁や柱、床、触れるものすべて心地よく感じられます
自然のやさしさでしょうね
構造材として使われたのは、ほとんどが地元東三河の木材。
この家のある豊川市からほど近い、愛知県奥三河地方で育ったスギやヒノキを多く使った。
奥三河地方は、古くから良質な木材産地として知られた地。
「建築をお願いした工務店から話を聞いた際に、心に残ったのが『身土不二』という言葉でした。
スギを中心にする三河材は、赤みが強くて色艶が良く、曲がりや反りが少なくて素直で使いやすいと評価が高い。
「建築をお願いした工務店から話を聞いた際に、心に残ったのが『身土不二』という言葉でした。
風土、気候に適した地元で育った木で建てれば、長く心地よく住める家になるだろうと思いました」
和室には床の間も設けてゆとりの空間に。拭き漆を塗ったトコ板など自然素材にこだわった。
漆喰の白、アカマツの木肌、畳の薄緑。やさしい色に彩られた空間は自然の素材だからこそ。
柱は地元産のヒノキ、梁や桁には地元産のスギやマツを使った。内装材も自然素材にこだわった。
フローリングにしたリビングの床はアカマツのムク板にし、リビングや和室の壁には漆喰を塗り、キッチンは土壁にした。
和室の天井は和紙のクロスを張り、リビングや和室に面した犬走りの部分は三和土で覆った。
木、土、紙といった自然素材で作られた家は、体も心にもやさしい空間となった。
お二人は次のように口を揃える。
「この家を通して、これまで見えなかったいろいろなものが見えるようになってきました。
自分たちの暮らしにとって、何が本当に大切なのか、何を大切にしなくちゃいけないのか。
今は自分たちが得たこの思いを、できるだけ多くの人と共有できたら、と願っています」
自分たちで打ったそばと、みんなが作った料理で楽しいパーティ。おいしい料理に大満足。